はじめに:Macユーザーを襲ったe-Tax開業届の「罠」

※この記事は2025年6月時点の情報に基づいています。最新の手続きについては必ず国税庁の公式サイトをご確認ください。
「よーし、個人事業主になるぞ!手続きはe-Taxでサクッとオンライン完結だ!」…そう思っていた時期が、私にもありました。
しかし、いざ「開業届」をe-Taxで提出しようとした瞬間、Macユーザーは大きな壁にぶつかります。そう、e-Taxソフト版がWindowsにしか対応していないという問題です。
この記事では、私が実際にこの問題に直面し、様々な選択肢を検討し、最終的にどうやって開業届をオンライン提出したのか、その全記録を共有します。Macユーザーのあなたが、私と同じ轍を踏まないための実践的なガイドです。
【原因】なぜMacのWeb版e-Taxで開業届が出せないのか?

「なぜ、確定申告はWebでできるのに、開業届はダメなの?」と疑問に思いますよね。 それは、e-Taxに「Web版」と「ソフト版」の2種類があり、それぞれで対応できる手続きが異なるためです。
種類 | 特徴 | 開業届の対応 |
---|---|---|
e-Tax(Web版) | ブラウザで利用。インストール不要で手軽。 | ❌ 対応していません |
e-Tax(ソフト版) | 専用ソフトをPCにインストールして利用。多くの手続きに対応。 | ✅ こちらを利用する必要あり |
そして、残念ながら「個人事業の開業・廃業等届出書」のオンライン提出は、このe-Tax(ソフト版)でしか対応していないのです。これが、多くのMacユーザーがつまずく最初の関門となります。
【代替案】Macで開業届を出す4つの選択肢と評価

選択肢1:仮想マシン(Parallels Desktop等)でWindows環境を自作する
メリット
Mac上で完全なWindows環境が手に入り、e-Taxソフトはもちろん、今後もしWindowsでしか動作しないソフトウェアが必要になった場合にも柔軟に対応できます。エンジニアとしては、非常に安心感のある選択肢です。
デメリット
Parallels Desktop自体のライセンス費用に加えて、Windows OSのライセンスも別途購入する必要があります。合わせると、安く見積もっても数万円の初期投資が必要になります。
私が選ばなかった理由
開業手続きという一度きりの作業のために、このコストをかけるのは費用対効果が見合わないと判断しました。今後、仕事でWindows環境が必須になる見込みもなかったためです。
選択肢2:クラウド会計ソフト(freee, マネーフォワード等)の開業届作成サービスを利用する
メリット
いくつかの質問に答えるだけで、簡単かつ無料で開業届が作成でき、提出まで代行してくれるサービスもあります。非常に手軽です。
デメリット
サービス利用後に、その会計ソフトの有料プランへの営業・勧誘が続く可能性があります。
私が選ばなかった理由
まずは会計ソフトに縛られず、自力で確定申告をやってみたいという思いがありました。また、「開業届のためだけに、今後の継続的な営業連絡を受けるのは避けたい」と感じたためです。
選択肢3:紙で作成し、郵送または税務署へ持ち込む
メリット
追加コストがほぼかかりません。国税庁のサイトからPDFをダウンロードして手書きするか、PCで入力して印刷します。
デメリット
手間と時間がかかります。印刷環境が必要ですし、郵送や税務署へ行く時間も確保しなければなりません。
私が選ばなかった理由
エンジニアとして、できる限りすべての手続きをオンラインで、データとして完結させたいというこだわりがあったため、この方法は最後の手段と考えました。
【結論】私が選んだ現実的な解決策
最終手段
以上の検討の結果、私はたまたま手元にあった別のWindows端末にe-Taxソフト版をインストールして、開業届を提出しました。
読者への推奨
これは、誰もができる方法ではないかもしれません。しかし、「もし家族や友人がWindows PCを持っているなら、少し借りて作業するのが最も低コストかつ早い解決策になる」という一つの現実解として提示します。
もしWindows端末がない場合の推奨
もし私がWindows端末を持っていなかったら、手軽さを最優先するなら「② クラウド会計ソフト」、今後のWindows利用も視野に入れるなら「① 仮想マシン」を選んでいたでしょう。ご自身の状況や価値観に合わせて判断してみてください。
【朗報】最初の壁を越えればMacだけでOK!

ここまでMacユーザーに厳しい話をしてきましたが、ご安心ください。最も面倒なのは、本当に最初の開業届だけです!
私自身、開業届を提出した後、
- 青色申告承認申請書
- インボイス登録申請書(適格請求書発行事業者の登録申請書)
といった、開業直後に必要となる重要な手続きを行いましたが、これらは全てMacのブラウザからe-Tax(Web版)だけで問題なく完結できました。
つまり、最初の開業届の壁さえ乗り越えれば、その後の主要な手続きは、あなたの使い慣れたMacで快適に進めることができます。
まとめ:Macユーザーが開業の壁を乗り越えるには

今回は、Macユーザーがe-Taxで開業届を提出する際に直面する問題と、その解決策について、私の実体験を基に解説しました。
要点の振り返り
- 開業届のe-Tax提出は、現時点ではWindowsのe-Tax(ソフト版)が必須です。
- Macユーザーには「仮想マシン」「クラウド会計」「紙提出」「Windows機を借りる」といった選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 最初の壁さえ越えれば、その後の青色申告やインボイス登録はMacのWeb版で完結できます。
開業手続きは面倒に感じるかもしれませんが、一つ一つの課題を論理的に評価し、自分にとっての最適な解決策を見つけ出すプロセスは、まさにエンジニアのプロジェクトそのものです。この記事が、あなたの「開業プロジェクト」の最初のマイルストーンを達成するための一助となれば幸いです。